2017年6月26日月曜日

聖堂

 オオキンケイギクはこの数年でかなり増え、とても小さな(猫の額とも言える)前庭の隅にも咲く。帰宅する際に視界に入るので、夕暮れ時などはぱっと明るく映る。猫の額の前庭だけでなく、犬走りの辺りや今は人がいない隣家とその境にも、花のコロニーが出来始めていて、どこから始まったのか、そもそも始まりがあったのかもわからない。

 家の裏側、日陰で少し湿っている場所には紫陽花がずっと植わっている。そのそばでもりもり伸びていたオオキンケイギクをごっそりと抜いた。もってりした紫陽花の、ガクの塊を少しだけ持ち上げ、地中に伸びているだろう根を移植ごてと根切り鋸で掘り出そうとしたら、土の上に蝸牛の殻だけが残っていた。静かな聖堂のように。

その花をつままくときは とことはにすぎさりにけり

子供の頃、多分まだ年齢が一桁だったころ、れんげ畑でイベントがある(そう大それたものではないと思うが、田舎には娯楽がない。子供の頃は、嘘みたいに続くらしい人生に退屈していたし、それはわたしの顔に常に出ていた)とどこからか聞いてきた母が、家族で出かけようと計画をした。心踊る計画ではな...