2010年5月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:4097ページ
■思春期病棟の少女たち
いつかは読むだろうと思っていた。もう少女ではなくなったけれど。ぷちぷち途切れる文章は茹で過ぎたスパゲッティのよう。自分が立っている世界との折り合いがつけられなかった、どこにでもいるありふれた少女たちの精神病棟を、作家になった著者が中年になって振り返っている。退院する少女もいるし自ら死の世界へ飛び込む少女も、もっと遠くの心の世界へ行ってしまう少女もそこではありふれた「少女」でいられたのだろう。世界とは離された場所にいたとしても、著者と著者の友人達がいたそこは、眩しい青春の光に照らされたものだったと思いたい。
読了日:05月31日 著者:スザンナ ケイセン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/6295205
■グアヴァ園は大騒ぎ (新潮クレスト・ブックス)
コミカルな中にかすかな哀しみの漂う、けれどそれは人生或いは世界が回っていく中ではちっとも大した事ではない、と思わせてくれる、ふわふわしたつかみ所のない夢のような一冊だった。主人公サンパトの母クルフィの料理と食事について取り憑かれている様の記述がたまらなく面白い。私はインドについてはこれまで断片的に繋いできたイメージの中の「インド」しか知らないが、土ぼこりの中に浮かぶ色彩を想像するのは楽しかった。自分を取り巻く世界から逃亡したくなったらまた読みたい。
読了日:05月29日 著者:キラン デサイ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/6266523
■小さきものたちの神
「歴史のにおい。風にのってくる古いバラのような。」所々で思い出すように繰り返されるこの言葉は、語り手であるラヘルとその双子の兄エスタパンの歴史そのもの、過去の匂いだろう。思い出す度に鼻先をかすめる過去の匂い。懐かしさと同時に二度と戻らない過去の思い出。忘れようと努めても決して消えない過去の。子どもだったラヘルの視点から描かれるインドは自然の色彩に、歴史に、綿々と続いてきたカースト制度に、ラヘル自身の無限の想像力に溢れている。詩のような文章の流れは川のようだ。
読了日:05月26日 著者:アルンダティ ロイ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/6229151
■喪失の響き (ハヤカワepiブック・プラネット)
読了日:05月25日 著者:キラン・デサイ
http://book.akahoshitakuya.com/b/4152089059
■ママ・グランデの葬儀 (集英社文庫 40-A)
読了日:05月22日 著者:ガルシア・マルケス
http://book.akahoshitakuya.com/b/4087600793
■停電の夜に (新潮文庫)
読了日:05月15日 著者:ジュンパ ラヒリ
http://book.akahoshitakuya.com/b/4102142118
■時は夜 (現代のロシア文学)
気持ちが暗澹とする。もう搾りきった生クリームの絞り袋を、しつこくのしてどうにか一粒の白い淡雪を落とそうとするような、必死だけれど後から空しさばかりが襲ってくるような、気持ちの遣りどころがどこにもない。書き手である「私」の娘が送りつけた短い叫び声がずっと続く。貧しいということが蝕んでいくものは愛、健康、未来、希望、何もかもだ。物語の全背景はぼうっと映るだけだが、所々語り手の「私」がズーム・インして叫ぶ。そしてその叫びにスポットライトが当たる。誰も彼もの自分勝手さとそれに苛立つ「私」が殴りつけてくるような物語
読了日:05月13日 著者:ペトルシェフスカヤ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/6073015
■ミーナの行進 (中公文庫)
小川洋子はいつでも何かを、登場人物たちに失わせる。例えばそれはもののなまえや人という、些細だけれどかけがえのない、途方もない痛みと喪失感を伴うものばかり。それでいて甘い閉塞感が漂うのが「小川洋子節」だと思っていた。特に大きなお屋敷全体がその閉塞さを醸し出す場所になるのか、とも。けれど、病弱でお屋敷に住んでいる従妹・ミーナこそ死の途方も無さをはっきりと身体に纏わせているとはいえ、とても清々した少女だった。それは関西弁の砕けた会話がそう思わせるのかもしれないが、これまでのように喪失の残虐さが無く、むしろ砂のようにさらさらと美しく、「少女」を失わせていったと思う。
読了日:05月11日 著者:小川 洋子
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/6060055
■ジャスミン (文春文庫)
読了日:05月11日 著者:辻原 登
http://book.akahoshitakuya.com/b/4167316102
■海辺でロング・ディスタンス (角川文庫)
川島さんの本はだいたいどれも読んでいるのだが、今回は他のどれよりも流されている感が強い。セックスの後の汗やジョグの後の汗の匂いが薄い気がする。それと登場人物が散逸していて(ネグリジェババアについてもう少しあるのかと思った)まとまりが少なく、読みづらかったのが残念。
読了日:05月06日 著者:川島 誠
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/5994822
■石のハート 新潮クレストブックス
読了日:05月04日 著者:レナーテ・ドレスタイン
http://book.akahoshitakuya.com/b/4105900307
■カッコーの巣の上で
読了日:05月02日 著者:ケン キージー
http://book.akahoshitakuya.com/b/4572008531
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2010年6月2日水曜日
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