2017年3月8日水曜日

ひつじ

 今日も、子どもを抱いた。始まりから比べてみると、毎日驚くほどの大きさだ。手足は随分長く伸びたし、白目はまだうすあおいにしろ、身体からは甘い赤ん坊の匂いが全くしない、ふつうサイズの子どもを抱いた。ぷんとむくれていたからだ。膝の上に乗せて腕で背中を支える、赤ん坊を抱く姿勢で抱っこした。子どもはわたしの髪と首筋と胸元の匂いを確かめると、すうっと瞼を閉じる。わたしはその顔に自分の顔を寄せて、落としてしまわないように柔らかく抱きしめる。二度と戻らない日を思い出しながら、いずれ抱けなくなる日を想像する。ゆらゆらと抱いていると、子どもの体温とわたしの体温が混じり合って、気分が良くなった。そのまま子どもが眠ってしまったので、ベッドに入れてわたしはぬるいお茶を飲んでいる。

0 件のコメント:

コメントを投稿

その花をつままくときは とことはにすぎさりにけり

子供の頃、多分まだ年齢が一桁だったころ、れんげ畑でイベントがある(そう大それたものではないと思うが、田舎には娯楽がない。子供の頃は、嘘みたいに続くらしい人生に退屈していたし、それはわたしの顔に常に出ていた)とどこからか聞いてきた母が、家族で出かけようと計画をした。心踊る計画ではな...