2020年12月17日木曜日

スノー・スノー・ドーム

雪の降る夜、すっかり町の灯が落ちると、空の方がずっと明るくなる。空の色はあかるい墨色を混ぜたグレイ、星の出る夜に比べたらずっと不透明で、降る雪片もやはり不透明の白か、灰。断続的に降るのでそれは地上から昇っていくのか、それとも本当に空から降ってくるのか、同じ雪がスクロールしているのか、ずっと眺めていると区別がつかなくなる。

電燈の下はそこだけがぽっかりと明るい為に瓶の底めいていて、降る(或いは昇る)雪が時折吹く風に揺れながら、正しくその中で上下している。わたしの見ている風景は、目にした瞬間ドームに覆われる。小さな海の町が閉じ込められた、珍しくもないスノードームだ。雪片とデフォルメされた風景を閉じこめたスノードームにある、稚拙な作りの電燈の下にただ雪が降るように、わたしの目で切り取られた風景にも雪が降る。

普段なら気にも留めない電燈の光は、雪の夜になるといつもより明るく灯る気がするが、それでも闇の中を照らすにはとても小さいのだ。幽けきあかりは諦めに似たため息を催させる。

あなたの住む街でも、電燈の下に雪が降るでしょうね。それはどのくらい明るく揺らいでいるのでしょう。あなたのいない町の電燈の下で降る雪を見ながら、わたしは時折想像します。既にわたしの居なくなった街に、或いは初めから居なかった街の電燈の下に降る雪の事。

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