2009年12月6日日曜日

10月の読書メーターまとめ

2009年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2193ページ

■羊たちの沈黙
菊池光さんの訳は独特なので、読みにくい人もいるだろうけれども、本の中の傍観者になった途端に一直線。引き込まれ方、引き込み方の強さよ……。グロテスクさ(或いはえげつなさ?)の中にもきちんと礼儀正しさと上品さを持ち合わせているレクター博士は紳士だ。静かに、一ピースごとに欠片がカチリとはまっていく後半部分はため息が漏れる。
読了日:10月31日 著者:菊池 光,トマス ハリス
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/3579414

■最終目的地 (新潮クレスト・ブックス)
キッチュでキュートな登場人物達だった。大体、自殺した作家の妻と愛人、その娘、作家の兄(ゲイ)とその恋人が一緒に暮らしているというところがちょっと背徳的である。一歩間違ったらメロドラマ、と思うような関係の中に、自殺した作家の伝記を書きたいと青年が現れて、停滞していた船が滑り出した。青年がくるまでの彼らだったら考えてもいなかった未来へと到着することになる。ああ、恋って言うのは「落ちずにはいられない」のだろうな。「読む」ことを純粋に楽しめる、心地よい物語だった。
読了日:10月23日 著者:ピーター キャメロン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/3510434

■すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)
読了日:10月18日 著者:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
http://book.akahoshitakuya.com/b/4150203733

■僕の双子の妹たち
きょうだいの祖父の存在が、暗く深刻になりがちな題材の救いでもある。特に、胃袋を満たしてくれる温かな料理は、どんな優しい言葉よりも穏やかに身体に行き渡るだろう。うつくしい文章体の会話だった気がする。ただ、時折その中にくだけた表現があってそこに違和感があったかも。周りの個性によってより主人公の「傍観者」ぽさが引き立ってしまうけれど、主人公に見てわかるような毒気がないところがとてもいい。
読了日:10月14日 著者:白石 公子
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/3413112

■ぼくのキュートナ
なんてかわいいラブレターだろう!周りと比べたら(比較こそナンセンスだけど)ちょっと変わったタイプかもしれないけど「ぼく」のキュートナちゃんだから、気にしないだろうな。かわいいこととタフであることが共存するんだなあ。
読了日:10月11日 著者:荒井 良二
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/3382216

■ベル・ジャー (Modern&Classic)
シンデレラになれなくても、ガラスの靴は既に割れていたとしても、それでもそのガラスの靴を望まずにいられるだろうか?選ばれた人間でありたいと思うのは、子どもだからだろうか?
二十歳の頃に、彼女に会ってなかったことで、私は本当の自殺からは救われていたのだろうと思う。ベル・ジャーが頭の上にぶら下がっているのは自分だけではないけれど、そのベル・ジャーに気付く人間は少ない。勿論気付かなければ幸せだとは思わないけれど。若ければ若いほど、世界は自分のために存在し、自分はそれらを統べる女王(王)であると錯覚しがちだ。けれど経験によって知る。自分は世界のどこにでもいる、ただの女や男であると。それどころか何も出来ない取るに足らない人間だと。そしてそれに絶望する。やがて諦めて受け入れるーーそれが、大人になることだから、とーー。それでも憬れる。絶望に憬れるようなものだとしても。彼女は、まったく偶然にオーブンに頭を突っ込んだのだろう、生きにくさ故に。
読了日:10月09日 著者:シルヴィア・プラス

http://book.akahoshitakuya.com/b/4309204015

■マイナークラブハウスの森林生活 (ピュアフル文庫 き 1-3 minor club house 2)
多分生きていくには子どものタフさ(それこそぴりかはタフだ。野宿や生の野菜を囓っているからではなく)の方が向いている。ぴりかや天野はタフだ。でもそれは痛々しいタフさだ。

読了日:10月06日 著者:木地 雅映子
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/3333115

■金魚生活
言葉が通じないということは黙っているわけではなくて、でも相手に届かないというもどかしさは、ちょっと綺麗事になっていたような気もしたけれど……。勝手にもっとグログロ(それこそ、なんか騙し騙されの思惑が飛び交いそうな)しているのかも…?と思っていたので、あっさりと終わってしまって淋しい。金魚色って良いね。その色のハーフコートを、孫が生まれた玉玲が着ているというのも、洒落ている。日本に滞在中の外国人という、寄る辺の無さがまた、大きな水槽にゆらゆらと尾ひれを揺らしながら泳いでいる金魚にも重なる。絵的だな。
読了日:10月04日 著者:楊 逸
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/3320007

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